人々は語り合いながら、人と自分とを区別する。人々は径から道へと 拓いて、風景と自分とを同化する。人々は陽春の柔らかな輝きの下に、緑草を見つける。広大無限な大宇宙の偉大さを、新芽に見出す。芸術とは何だろ・・・・・日本の建物がそうであるように、自然と人との融合を求める願望を秘めている。西洋建物の、天に鋭く伸び、人間を誇張する思想とは根源的に異なろう。
日本の伝統美を尊び、さらに発展をと試みるなら和洋折衷文化の現代から何を拾い上げ、何を取り去るのかが芸術家の創造であり、主張だ。わたしは、芸術の文字を“芸”と“術”に解体して考えてみると、芸とは神、すなわち大自然そのものではないか。また術とは、“すべ”、すなわち人間の技である。術が神を相手に同化すれば、宗教的なあの澄んだ魂の再現となって結晶する。
作品を生みだす芸術家の宿命は感動を素直にかつ十分に白紙に満たしきることにある。それゆえ、躍動美とか調和といった抽象概念を、作品という具体的な主張で世に問うもの・・・・・そう思えるのだ。
橘 天敬

明治39年   (1906)
  京都に生まれる。
昭和元年   (1926) 20才
  園部香峰(画号)として仏教美術研究に専心、山口県佐和郡観念寺にて「如来像」制作。
昭和 8年   (1933) 27才
  タイ、インド、ヨーロッパ各国に遊学。 タイ国立博物館にて個展開催。
橘 天敬
昭和 9年   (1934) 28才
  シンガポールにて個展開催。
昭和10年   (1935) 29才
  海外遊学中に文展招待される。
昭和14年   (1939) 33才
  イタリー政府より文化勲章贈られる。
昭和16年   (1941) 35才
  第1回日東美術院展を東京都美術館にて開催。
昭和24年   (1949) 43才
  東京美術学校西田正秋教授の進言により橘香果と称する。
昭和25年   (1950) 44才
  “橘天敬”と改名する。これにより障壁画の製作にかかる。
昭和27年   (1952) 46才
  丸の内東京会館にて個展“橘天敬新作会”を開催。
昭和32年   (1957) 51才
  丸の内工業倶楽部にて個展“橘天敬展”を開催。
橘 天敬

昭和35年   (1960) 54才
  メキシコ政府招請によりメキシコ国立美術館にて展覧会開催。
昭和37年   (1962) 56才
  「富岳雲海図」を芝白金迎賓館において展示、ロバートケネディー氏に贈呈される。氏没後、国立フリーア美術館に移館。
昭和38年   (1963) 57才
  「無心光明」制作、池上本門寺所蔵。
昭和39年   (1964) 58才
  「日暖かし帝城の春」制作、逓信総合博物館所蔵。
昭和40年   (1965) 59才
  明治神宮参集殿にて個展“橘天敬の芸術”開催。
「八洲之気図」制作、発表。明治神宮に奉納。
昭和41年   (1966) 60才
  西テキサス州立大学において“日本美術”について講演。
西テキサス州立大学芸術学部名誉教授に就任。
昭和45年   (1970)64才
  東京美術倶楽部にて個展“橘天敬障壁画展”開催。
「静姿正観(風神)至情霹靂(雷神)」(218×1100)制作、発表。
昭和46年   (1971)65才
  米国テキサス州バンハンドル・ブレンズ歴史博物館にて障壁画展開催。
バンハンドル・ブレンズ歴史博物館に障壁画6点収蔵。
昭和47年   (1972)66才
  米国ワシントンDC国立フリーア美術館に障壁画「静姿正観(風神)至情霹靂(雷神)」(218×1100)1970年作収蔵。
昭和50年   (1975)69才
  三越本店7階大ホールにて個展“橘天敬の藝術”開催。
昭和52年   (1977)71才
  5月駐仏日本大使館後援でパリ市ドロアン画廊にて個展“L’ART DE TENKEI TACHIBANA”開催。パリ市より芸術功労賞授賞。
昭和53年   (1978)72才
  11月福岡岩田屋にて個展開催。真言宗大本山国分寺第68世座主光明円院大僧正西口公教猊下の導きにより入道得度。
昭和54年   (1979)73才
  1月大阪阪急百貨店にて個展開催。
昭和55年   (1980)74才
    6月米国テキサス州バンハンドル・ブレンズ歴史博物館にて展覧会開催。 「スターンの桜」バンハンドル・ブレンズ歴史博物館に収蔵。
昭和57年   (1982)76才
  5月倒れ、闘病生活に入る。
昭和59年   (1984)77才
  6月1日逝去。
橘 天敬
平成 5年   (1993)
  英国大使博物館ジャパンギャラリーにおいて10月7日から11月7日まで橘天敬遺作展“橘天敬の藝術―Between Heaven and Earth”開催。大英博物館に「和楽之図」(248×1464)1975作.収蔵。
平成14年   (2002)
    11月帝国ホテルにて個展開催。
平成15年   (2003)
    5月帝国ホテルにて個展開催。
平成16年   (2004)
    6月逓信総合博物館において「橘 天敬屏風絵展」開催。
平成17年   (2005)
    9月イタリア上院議会に於いて「橘天敬の芸術展」開催。
平成18年   (2006)
    5月東京美術倶楽部にて「橘天敬生誕100年記念屏風絵展」開催
平成19年   (2007)
    4月パリ、アテネ劇場にて市川團十郎丈らご協力にて屏風絵展
平成21年   (2009) 
    7月フジテレビ開局50周年記念映画「アマルフィ」に美術協力